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“売り絵”作家の憂鬱

☆エンジェルのほほえみ(花岡京子)


         “売り絵”作家の憂鬱


   部屋に一枚の絵が飾られていることで、気分がガラッと変わることがありま
  す。同じ絵を毎日観ていてもその時の体調や気分的なもので、風景画であって
  も静物画であっても、絵から受けるイメージが全然違うこともあります。それ
  が芸術作品の持つ力だと思うのですが、人の手によって描かれた絵画が総て芸
  術作品かといえば、簡単にそうですとは言えません。

   美術史上にキラ星のごとく輝く天才達の作品と、”売り絵”と称される絵を
  描く作家達とは、同じ絵を描いても天地の隔たりがあります。“売り絵”とは、
  デパートや展示会でよく売られている5万円から30万円程度の比較的容易に買
  える値段の付いた、売ることを目的に描かれた絵を指します。

   山や河川などの風景や花を題材にすることが多く、手馴れた筆づかいで描か
  れているはずなんですが、特に手馴れたタッチということもなく、無気力な筆
  づかいで、絵の具が単に塗られているといってもいい出来栄えのものが、少な
  くありません。

   安価に直筆の絵を供給する役割を果たしていると言えば言えなくもないので
  しょうか。新築した家の壁に写真を貼る訳にいかないから、豪華な額縁に入っ
  た山紫水明の風景画を飾る。人それぞれで、プラモデルのようなテカテカキラ
  キラ絵が素敵と思えば部屋の装飾の役割は十分果たしています。

   多分、名前も知らない売り絵作家の描く花瓶の花と、たとえば刷り上がりの
  ちょっと悪いゴッホかピカソのプリント(印刷物)とどちらが部屋の装飾の役
  割を果たしているかといえば、その判断(好み)は確かに千差万別で、どちら
  がいいとも悪いとも言えないと思います。

   実を言えば、私の事務所の壁には、パリの蚤の市で1000円ほどで買ったゴッ
  ホの『夜のカフェテラス』のプリントが飾られています。この絵を観て、私は
  いつも密かにパリ市内に点在する、人影のない夜のカフェテラスを思い出して
  います。

   燈の消えかけたパリの夜は、本当に寂しいんですよ。通りからちょっと入ると、
  あんな大都会なのに、人気がほとんどいなくなります。ゴッホはそんなことを忖
  度しなかったと思うのですが……。人生の寂しさがカフェテラスの明かりの中に
  凝縮されていると思えてなりません。

   コラムの本題と違うことを書いていますが、今、英語を勉強している若い人
  達に、小ぶりに、なんとなく、それ相応に、一応まとまっているが本質的には
  全然違う、角度を変えて見れば絵でもなんでもない、売り絵作家になってほし
  くないという気持ちから書いてみました。


  (2000.10.6)

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