今年前半の賃貸住宅の新設傾向─背景にある賃貸経営に対する根強い投資意欲が増設支える
今年前半の賃貸住宅の新設傾向
背景にある賃貸経営に対する根強い投資意欲が増設支える
賃貸住宅新築の増加傾向が市場マインドの活性化に影響
今年(2012年)前半1~6月に新たに建てられた貸家、つまり賃貸住宅は、前年の同時期に比べ8・6%の増加となっています。空室が増加しているといわれる中、賃貸住宅の新設が続く背景を見ていきたいと思います。
毎月末に、国土交通省から前月の住宅の新築着工戸数が発表されます。全国の住宅建設の動向を知る大事なデータですが、7月末に発表された貸家(賃貸住宅)の1~6月半年間の新設は14万7,174戸で、前年同期比8・6%増を見せています。このうち、首都圏は5万3,029戸で、やはり6%増の高い伸び率です。
背景には、住宅エコポイントや東日本大震災による被災地着工の増加、低水準のローン金利といったといった要因が挙げられますが、基本的には賃貸経営に対する根強い投資意欲がうかがえます。
今日、賃貸経営を圧迫する市場の軟調が、物件飽和の強い影響を受けていることはよく知られています。そのために建物や設備の差別化を図り、競争力を高めることが求められています。
こうしたことが背景にあって、古いアパート、マンションをリフォームすることなく、一気に新築に建て替えて経営の安定化を図ろうとする動きが、活発化しているのです。
市場で入居者が選ぶのは1995年以降が、全体の54%と過半数を占める
実際、マーケットでは築浅の人気が高く、新築~10年ものに人気が集まります。それを裏づけるように入居決定のデータとして、国交省が年1回実施している「住宅市場動向調査」の最新版(2011年度)を見ましても、住居を探している消費者が入居した賃貸住宅の建築時期は、「平成7年以降」が全体の53・9%と過半数を占め、次いで「1985年~1994年」が21・3%の割合。
1985年~1995年以降で、全体の75%を占めています。あと、「1975年~1984年」が8・3%ですから、実質、新築~14~5年物中心に、築20~30年物で市場が形成されています。
もちろん築年数に関係なく、補修・修繕、リフォームをタイムリーに行い、高い入居率を見せている物件も少なくありません。
ところで、賃貸住宅をつぶした後、どのように再建築されているかを国交省のデータで見ますと、2010年度に再建築するために除却された賃貸住宅は、1万7,464戸で、その跡地に再建築された住宅は、2万1,593戸。
再建築とは、既存の住宅の部分あるいは一部を除去し、同一敷地に住宅を着工することを指します。この2万1,593戸のうち、持ち家や社宅などを除いた賃貸住宅が1万9,476戸。つまり1万7,464戸を除却して、1万9,476戸の賃貸住宅を新築したことになります。
これは何を物語るかといえば、賃貸住宅の人気の高さを示す何ものでもありません。
7月の新設は、7ヵ月ぶりの減少
こうした傾向をマーケット的に捉えれば、新築が増えて、新築─築浅─古物のバランスが取れ、賃貸住宅を探している消費者の選択肢が広がり、市場マインドの活性化につながることになります。
過去5年間の賃貸住宅の新設は、2008年を除いて前年比4年間の平均が15%のマイナスとなっていました。2011年は2006年の約半分の規模です。こうした新設抑制の経由があって、相場が持ち直しつつあると報告されています。
なお、貸家の7月の新設は、前年同月比14.7%減、季節調整値が前月比4.8%減の2万5,982戸で、7ヵ月ぶりの減少を見せました。また、貸家の今年1~7月の新設合計は17万3,156戸で、前年比4.3%増となっています。
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