最高裁、「敷引特約契約」と「更新料」の判決を言い渡す
“最高裁、「敷引特約契約」と「更新料」の判決を言い渡す
最高裁判決の存在も影が薄くなる市場動向
2011年は、3月11日の東日本大震災とその後に続いた福島原発事故が甚大な被害をもたらし、9ヵ月経った今も各方面に依然大きな影響を投げかけています。
まず、賃貸業界で今年の主な出来事として、二つの大きな裁判で判決が出たことが挙げられます。
一つ目が、3月24日、最高裁判所第一小法廷が地裁、高裁において判断が分かれていた、「敷引特約契約」を有効としたこと。
消費者の利益を一方的に損ねる契約条項を無効とする消費者契約法10条に該当するかどうかが争点となった訴訟の判決で、最高裁は「特約は不当に高額でない限り有効」との初判断を示しました。
二つ目が、やはり最高裁判所が7月15日、「更新料」の支払いをめぐる裁判で、「高額過ぎるなど特段の事情がない限り有効」との判決を言い渡し、更新料条項は「有効」とする司法の判断が初めて確定しました。
裁判における最大の争点は、敷引契約同様、消費者契約法で、第10条の「信義則に反して消費者利益を一方的に侵害する恐れ」に対して、更新料が賃貸借契約書に明示され、特段の事情がない限り「消費者利益を一方的に害するとはいえない」との判断を示しました。
この二つの判決によって、賃貸・仲介の実務面で法整備が進んだのは偽りのないところです。
しかし、市場自体は豊富な物件の中、借り手有利な状態を形成していることから、いつまでも長年の慣習による取引き形態を許してくれません。
敷金を減額して、更新料をなくし、礼金も見合わせる物件がジワジワ拡大して、上記二つの最高裁判決の存在も影が薄くなっています。
安定経営を図るために、入居率を高めることが優先されるのですから、入居条件は市場に合わさざるを得なくなっており、この傾向は年々高まる一方で、来年はさらに拍車がかかることが予測されます。
► 社会情勢、経済事情、世相を色濃く映す
► 最高裁、「敷引特約契約」と「更新料」の判決を言い渡す
► あらためて浮き彫りになった、賃貸経営における地震の備え
► 賃貸永住派と世帯数が増える一方、新築参入の鈍さが際だった年
► 最大の課題は賃貸経営の眼目、「空室対策」にどう向き合っていくか
a:1387 t:1 y:1