香りは魅力を引き立て、相手のこころを捉える
香りは魅力を引き立て、相手のこころを捉える
今回は、本職の絵の世界から離れて、「香り」についてお話したいと思い
ます。
私の言う香りとは、香水のこと。センスのいい服装を身につけ、足元を引
き立てる靴を履き、時計やイヤリングの装身具まで十分に計算して、寸分の
隙もなくキッチリ装い、最後の仕上げはお化粧と香水をプッシュして、自分
だけの美しさをかもし出す。
日本の女性は海外の女性に比べると、香水を使う量や機会が格段に少ない。
欧米の女性は、香りに敏感、香り好きな人が多く、街中の雑踏でも、デパー
トでも、エレベーターの中にも、とにかく街には香りがあふれています。ニ
ューヨークでは、それはもう、仕事をする女性も遊ぶ女達も、自分の美しさ
や魅力を最大限に引き立てる道具として、香水を実に大胆かつ上手に使って
います。マンハッタンの匂いは、美しさを競う女達の香水の匂いと言っても
決してオーバーではないと思うほどです。
最近、ニューヨークの化粧品、香水とも、H2Oプラス(H2O+)やアヴェダ
(Aveda)などの天然海洋性植物がベースの自然派が増えていますが、本流は
依然シャネル19番、エタニティ、ココ、ティファニー、プワゾン、クリスチ
ャン・ディオールなどの名品に人気が集まっています。とはいえ、ニューヨ
ークの女性達は、ブランドに意外にこだわらない。自分が気に入ったものを
選び、とにかく量をつけるのです。
シュッと吹き付けるイメージではなく、ヘアスプレーでバシャーッと吹き
かけるという感じ。だから匂いもきつく、道ですれ違ってもいつまでも匂い
が残ります。ひそやかに、かすかに匂いを漂わせるというのではなく、匂い
を発散させている感じ。つける場所も各人の好みで、肌に擦り込んだり、服
の裾だったり、靴下の中とか下着とかいろいろ。
よくいわれる、”つけ過ぎはマナー違反”という言葉も、ニューヨークの
女達には無関係みたい。結局、自分の魅力をフルに引き立てる性的誘因作用
への期待感も込められている匂いといえるかも。入浴の習慣の違いから、体
臭隠しの目的もあるのでは、という見方もチョットは関係あるかもしれない
けれど、私が思うには、ニューヨークの女達が香水の匂いを好むのは、自己
主張からきているのではないでしょうか。
ビジネスにも恋愛にも自分を前に打ち出していくのに、自分流の匂いとい
うのは、相手の気持ちをグッと自分に向かわせるのに、それなりの働きがあ
ると思うのです。だから、ニューヨークの女達は“パフュームの女”となっ
て、街を闊歩するというわけ。
(2000.9.29)