In time we hate that which we often fear.
In time we hate that which we often fear.
文豪シェークスピアは、生涯に、喜劇、悲劇、史劇合わせて37編発表している
のですが、後期の作品『アントニーとクレオパトラ』(Antony and Cleopa-tra)
の中で、「In time we hate that which we often fear.」(人間は、しょっち
ゅう恐れているものをやがては憎むようになる)と書いています。
※日本語訳は「英語名句事典」(大修館書店)より。
『アントニーとクレオパトラ』は、クレオパトラとローマの政治家アントニ
ウスとの恋を描いているのですが、紀元前50年頃のエジプト、ローマの勢力関
係は複雑で、権力闘争に明け暮れる中での恋物語であり、史劇でもあるので、
ストーリーは重厚な展開を見せますそして人間観察に鋭い視線を注ぐシェーク
スピアならではの人間像が、短い言葉の中に凝縮されています。
人間は、しょっちゅう恐れているものをやがては憎むようになる―、これに
近い日本の諺に「可愛さあまって憎さが百倍」や「愛は憎悪の始め」がありま
す。相手方に度々気をもませ、いつもいつもじらしておくと、その反動で興味
は失せて、好きであった分だけ嫌いになり、次のステップには憎しみすら生ま
れてくる。恋愛感情にも、かつてあれほど相思相愛の仲であったのが、一転し
て顔を見るのも嫌というケース。映画やドラマの中はもとより、実生活にもよ
く見受けられます。
人の気を引いて振る舞うのも、そこそこにしておきなさい、という教訓をシ
ェークスピア先生が教えてくれているのではないでしょうか。
(2001.4.10)