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''『変化の“潮目現象”を際立てる賃貸マーケットの曲がり角』''(2004.3.12)

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賃貸最新レポート

変化の“潮目現象”を際立てる賃貸マーケットの曲がり角

マーケットの先を読む企画性力が一層求められる次代の賃貸経営

2004年春の賃貸商戦も3月を迎え、後半に入ってきましたが、ここへきて賃貸マーケットに変化の潮目を思わせる現象が際立っています。最近の賃貸事情をリポートします。

賃貸市場の現在の事情を語る資料のひとつに、ミサワホームアールディー株式会社が四大都市圏を中心とした会員(4000社)を対象にまとめた賃貸市場動向調査があります。アンケートの回答をもとにまとめられていますので、直近のマーケットの概況を理解するのに非常に役立つデータです。

『MISAWA-MRD賃貸市場動向調査』。2004年3月1日にまとめられた『春の転勤・入学シーズンにおける賃貸事情速報(2月の市場動向)』を見ると、今現在の賃貸経営の実情がくっきり浮かんできます。

要点を抜粋しますと、
・ 借り手市場が続く(東京)
・ 物件の付加価値が求められる(東京)
・ 仲介手数料0円を検討(東京)
・ 内容のよい物件は空室待ち(千葉)
・ 供給過多(三重)
・ 契約後2ヵ月は家賃不要物件も出てきた(兵庫)
・ 築10年の空室が目立つ(兵庫)
・ 賃料値下げ、敷金引下げの動き(福岡)

こうした声はこの数年来続いているもので、今にして出てきた現象ではないのですが、調査のたびに確認されるごとく、「供給過多・過剰感」が一番に回答されています。これはすでに顕在化された事実で、これからの賃貸経営は総てこの「供給過多・過剰感」をもとに、方向性(経営施策)を決めなければならないと思われます。

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つまり、今日の賃貸業界はすでに「需給のバランス」が崩れ、「供給過多・過剰感」の状態が顕在化して、「新賃貸市場」が形成されつつあるということです。

● 量が余っているのだから、顧客(入居者)は好きなものを選べる
● 高ければ少しぐらい(家賃を)まけてほしいと要求する
● 設備が古い、状態が悪いなどの気に入らないものは見向きもしない
● 仲介手数料もオープン状態。少しでも安い不動産会社へ行く
● 設備は最新のものがほしい。付加価値を求める
● インターネットの検索が常識化して、豊富な物件情報に接する

といった風に、我慢して限られた物件の中から選ぶのではなく、いいもの、気に入ったものを優先的に選んでいるというわけです。その結果、必然的に“汚い・高い・悪い”物件は相手にされなくなって、「空室が発生」します。

空室発生は全国的な現象ですが、この傾向は今後特別なことではなく恒常化するはずです。設備の整った斬新な建物が年間40数万戸ベースで新築されているのですから、築20年を過ぎると、よほどしっかり保守・修理、リフォームをしないと大半の物件が空室の発生にさらされることになります。

これからの賃貸経営は「厳しい競争」の中、「マーケットの先を読む企画力」に優れ、「入居者の動向に敏感である」ことが求められるのです。

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話を一転して、賃貸仲介不動産会社が厳しいマーケットの中を生き延び、業績を伸ばすのに何をすればいいのかを示す好例として、賃貸仲介専門に全国チェーン店を展開する株式会社エイブルの平田竜史社長が掲げる、経営課題『シェア拡大とドミナント化で収益向上を目指す』を見てみます。平田社長は業績を上げ、競争に勝つためのポイントに次の4項目を挙げています。

1.仕入れの強化の徹底
2.管理事業の強化
3.客付けの強化
4.教育・研修指導の徹底

仲介をメイン事業とする不動産会社にとって、古くて新しい永遠のテーマともいえる課題です。社会情勢も影響して、賃貸マーケットは年々歳々変化を遂げているのですが、賃貸の仲介現場の経営事情(課題)は10年前も20年前もそれほど大きく変化していないのが、エイブル社長の経営指針に如実に表れています。

この4項目はエイブルのみならず、仲介を事業とする不動産会社に共通している経営上の課題(努力目標)となっているはず。

店を開けていると顧客(入居者)が部屋を探しに来る。ファミリー向け、単身者向け、新築、駅から距離があるがその分、家賃が安い、目の覚めるようなデザインマンション…と、客の要望に見合う物件が数多く用意されていれば、契約はスムーズにいき、手数料が稼げて売上げも伸びる。

賃貸仲介店にとって売上げを伸ばすには、商品(物件)を多彩になおかつ豊富に揃えることがまず第一の原則。そのためには「仕入れ」を充実させる。この辺はどんな商売にも共通していることで、お客に旨いものを食べて満足してもらうには、素材のいいものを仕入れて、腕のいい職人が手を抜かずに料理するのと同じです。

入居者の要望を満たす物件を豊富に店に揃えておけば、それだけ契約率が高まるのは当然のこと。ですから売上げを伸ばすために旗を振る社長は、仕入れの重要性を力説するのです。

来店した客に物件の資料を見せ、現場に案内して、「賃貸借契約」を結ぶまでにもっていくには、不動産のプロとしての知識と営業ノウハウが求められます。ズブの素人を採用して一人前の営業マンに育てるのには「教育・研修」が必要。仲介不動産の知識が浅く、営業手腕に欠ける人間では契約を結ぶ(客付け)率が上昇しないのは目に見えています。

ということで、仲介業務の実績を伸ばそうと思えば、

 1.仕入れ(物件)の充実
      ↓
 2.そつのない営業で契約、決定率(客付け)を高める
      ↓
 3.そのためには、スタッフのレベルアップ(教育)が必須
   となります。

あと、賃貸事業の次のステップとして、春と秋に集中する「一本釣り的」な仲介業務を経営的により安定させるために、「管理事業を強化」するのは、近年の大きな流れとなっていることです。

▼▼

一方、貸主となる賃貸経営者の側から見ると、“やはり不動産は強し”の通り、ブームを思わせるような賃貸経営への新規参入、あるいは建て替えが続いています。『サラリーマンでもできる賃貸住宅経営・金持ち大家さん』本が人気を呼んでいるように、貸家の建設、投資マンションの売上げともに好調。とくに貸家は2000(平成11)年度以降、毎年40万戸を超す物件が新設されています。

・2000年度    42万6020戸  (前年比-4.0%)
・2001       41万8200  (   -1.8%)
・2002       44万2250  (     5.8%)
・2003       45万4505  (     2.8%)
・2004年(1~12月) 45万1629  (    0.3%)
※国土交通省調べ

かつてのように建てるとすぐに満室とはいかないものの、事前の市場調査をきっちりやっていれば、そう大ハズレはしません。だからこそ、賃貸経営の魅力に惹かれた土地オーナー、投資家が相次いで賃貸経営を始めることで、ブームを思わせるような新設が続いているのです。

賃貸仲介の最新の様子と賃貸仲介大手エイブルの経営スタンス、さらには賃貸経営サイドから現況を見てきましたが、2004年春の賃貸の商戦を終えて、業界は大きな曲がり角を越え、過渡期に直面したといえそうです。

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