「無類の“ペット好き入居者”」
賃貸「入居者事情」
「無類の“ペット好き入居者”」
何事も過ぎた人には早めの対応が一番
動物が好きな人はたくさんいます。文句をタラタラ並べる人間に比べ、クンクンとすり寄ってくる犬や猫はかわいいもので、少々無理をしてでもペットとして飼ってみたいのが人情。
かつてはほとんど、ペット禁止だった賃貸住宅業界も、“癒し”の流れに乗ったペットブームに着目、「ペット可」物件が増え始めました。といってもまだ数が限られ、ペットと暮らしたい入居者には狭き門。つまりどこもペット可物件は人気物件となっています。
そんな中、賃貸経営を新たに始めるのに、地域の他物件と差別化して特色を出すためにペット専門マンションを建て、最初からいきなり満室を実現したケースが各地で見られます。
室内のドア部分を工夫して部屋間の移動を楽にし、ペットの専用スペースを確保したり、建物外部に足の洗い場を設置する程度ですが、まだまだ数が少ないことから人気物件となっているのです。
今回紹介するのは、無類の“ペット好き入居者”のややハメを外した話です。
沢田憲一(仮名)さんは一戸建ての貸家を借りる際、入居の条件にペット飼育が可能であることを確認して引っ越してきました。契約書には「犬1匹」と記入して契約を結んだのですが、3ヵ月ほどしてノラ猫にエサを与えたのがきっかけで1匹が2匹、3匹と増え、半年ほどで犬、猫合わせて5匹が定住するハメとなりました。
そのうち友人からウサギがかわいいよといわれ、飼ってみるととにかくおとなしく、丸くてかわいい目にすっかりまいってしまい、オス、メスつがいで飼うことに。それでも沢田さんの“動物愛護”は止まりません。
この上さらにインコもやってきました。友人宅でたくさん繁殖したのをもらったのですが、沢田さん宅も日当たりや環境がよかったのか、ここでも繁殖し、5羽となりました。
これだけのペットの大所帯となると、隠すこともままならず、大家さんの耳に入り、大家さんもさすがに甘い顔ができず沢田さんに出ていってもらう(契約解除)ことにしました。
沢田さんはペット達を見殺しにすることができないので、次の住居が見つかるまで待ってほしいと懇願。街ではなかなか探すのが難しく、時間がかかったものの一応、知り合いに頼み込んでペットを分散して引っ越しましたが、何を思ったのか、最初に一戸建てを紹介した仲介した不動産会社を相手取って損害賠償を起こしたのです(正確には起こそうとしました)。
その言い分は、家主と入居者の間に立ち、もっと誠意を持って対応してくれれば、打開策も見出せたろうに、逃げ腰で不誠実な態度は許せないというもの。
引っ越し費用を始め、40万円を請求したのですが、仲介店は全く取り合わず、公的な場に話が持ち込まれることもないまま、それっきりオシマイとなりました。
もしあのまま沢田さんの入居が続いていると、ペットの数がますます増えて、家屋につく臭気、擦過傷(さっかしょう)のダメージは少なくなかったと思われます。何事も過ぎた人には早めの対応が一番です。
この話は、東京・江戸川区の出来事です。
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