「賃借人であると同時に、大家さん」
賃貸「入居者事情」
「賃借人であると同時に、大家さん」
貸すマンションより安い家賃のアパートに入れば、その差額が儲けに
山田隆さんは賃借人であると同時に、大家さんでもあります。どういうことかといいますと、賃貸マンション1棟を所有しているのですが、家族4人の生活はマンション近くの2間のアパートを借りています。ここが自宅。
3階建て18戸のマンションのうち1戸を自宅専用に使えばいいのに、マンションから歩いて10分ほどのところにアパートを借りて、母、妻、子供、本人の4人で暮らしています。
外観タイル貼り、瀟洒な玄関周りのRC造のマンションに比べ、アパートは築30年ほどの木造ですから見比べるとどうしても住環境、グレードの差は否めません。所有するマンションに住めば家賃が要らないのにどうして人のアパートを借りて入居するのか、その理由は至って現実的。
マンションは自分にとって「商品」。管理を充実させてできるだけいい条件で貸したい。そこに自分が住めば、1戸分といえども売上げ(家賃)が入ってこないでしょう、と説明する。貸すマンションより安い家賃のアパートに入れば、その差額が儲けになるのは誰にでも分かる計算です。
ウ~ム。割り切ればなかなか合理的な発想です。
自分が賃借人となる一方、賃貸経営していると、入居者の気持ちがよく理解でき、そこで得た経験を自分のマンション経営に色々取り入れることで、随分参考になる、と話します。
山田さんが自宅とするアパートは10戸で、大家さんは入居者募集と契約業務以外は自分でほぼ全部管理しているため、とにかく細かく、今時珍しいほどの「貸してあげる」スタイル。
入居者が買ってきた小ぶりの植木鉢を戸口に置くことさえ極度に嫌う。自転車置き場がなく、各戸の前に停めるが、停めている時のハンドルの角度を指定する。
ハンドルを左いっぱいに曲げ、その際ハンドル右端部分が建物の壁にスレスレ当たらないようにするとか、家賃は月末に前家賃とし、銀行引き落としと手渡し併用(選択)で、自宅が近くということもあり、集金に何度も訪れるそう。掃除は徹底していて、自宅と同じ感覚。
口うるさく、嫌われているかといえばそうではないみたいで、入居者とのコミュニケーション、人間関係ができていることもあって、入居率は高く、常時満室。この辺の機微が賃貸経営の“核心”で“コツ”といえるかもしれません。
山田さんはその口うるさ型のアパートの大家さんをよき見本に、ほぼ逆のことをして満室経営を続けています。逆のこととは、細かい規則はできるだけつくらないで、マンションが近いことから、日に何度も通い、清掃、敷地内の片づけを全部自分でやって、ゴミ一つ散らばっていない状態を維持しています。
入居者とのコミュニケーションは仕事の一部と心得、近所付き合いの感覚でやっているとのこと。ちなみに山田さんの収入はマンションの家賃収入のみです。
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