賃貸経営と外国人対応
多様化する仲介現場
賃貸経営と外国人対応
外国人入国者数、登録者数とも毎年最高記録を更新
外国人入国者数、外国人登録者数ともに記録を更新している今日、賃貸経営においても外国人の入居者とどう向き合っていくかが課題になっています。
法務省入国管理局のデータによりますと、
・ 外国人入国者数 ‥‥‥ 914.6万人(2008年)
・ 外国人登録者数 ‥‥‥ 215.2万人(2007年末)
・ 永住者 ‥‥‥‥‥‥‥ 86.9万人( 〃 )
・ 非永住者 ‥‥‥‥‥‥ 128.2万人( 〃 )
と、10年間で外国人登録者数は約1.5倍になり、わが国総人口に占める割合は、1.69%(総務省統計局の「2007年10月1日現在推計人口」による)となっています。
とくに政府が訪日観光客拡大の施策を打ち出していることから、今後さらに入国者数の増加が見込まれています。その中でも賃貸の入居者の対象となるのは、就労、留学、就学を目的として来日する人達。
国際化の波、労働力の確保、勉学希望者等、時代の動きに押されて門戸を少しずつ広げてきた結果、215万人を超す登録者数となったものです。
少子化が定着して入居者の数が先細りするのではないかと不安視されるだけに、こうした正規の在留資格を持つ訪日者、外国人登録者は、賃貸の顧客として本来歓迎するべきと思うのですが、如何せん温度差が見られます。
幼少の頃から身近にいて見慣れている人は、成長して大人になっても表情や言葉の端々で何を考えているのかがおおよそ見当がつき、読み取れます。それほど大きくはずれません。
ところが外国人となると、まず第一に言葉による意思の疎通が十分でないので、こちらもそうですが、先方も異文化状態になるため、どうしても「不安」「不審」思考が先行しがちで、「大丈夫かなあ~~」と気をもみ、「面倒だからやめておこう」となってしまいます。
やはり法務省入国管理局のデータですが、2009年1月1日現在、不法滞在外国人は約13万人、不法残留外国人の数は約11万人にのぼると推定されており、その大部分が不法就労していると見られています。
政府が認めている不法滞在外国人が約13万人。こうした約13万人の多くが賃貸住宅に住んでいると考えられます。
無視できない入居を求める外国人
それでは賃貸経営にとって、外国人対応として何をどうすればいいのか。
当然、「在留資格」を持って滞在し、入居を求めて来る外国人が扉をたたけば無視するわけにいきません。
外国人対応とは、入居者として外国人とどう向き合うかということなんですが、巷間、大家さんは、家賃をきっちり払ってもらえば原則、何ら問題はなく一般社会人としての公序良俗のモラル、他の入居者との常識的な付き合いがあれば特段気にすることはないという派と、他の入居者が嫌がり、雰囲気もついていけないので、なるべくお断りしているのですよという派に二分されるようです。
この傾向は物件の立地によって違いが出ています。東京、名古屋、大阪の都心部で外国人が比較的多く住む土地柄では、そう気にしない派が多く、逆に滞在者数が少ない土地では特例的な見方をする派がどうしても出ているようです。
グローバルスタンダードといわれる時代ですから、外国人が仕事や勉学で来日して長期あるいは短期間滞在する場合、ウィークリーマンションを含め、頼りにするのは賃貸住宅です。大家さんとしては同胞相手に賃貸経営するつもりでいても、入居を求めて外国人が扉をたたけば無視するわけにいきません。
必要書類が揃っていれば、もう日本人と何ら変わらないといえそう
2006年の1月24日、神戸地裁で「国籍を理由に民間賃貸住宅への入居を拒否したのは法の下の平等を保障した憲法などに違反するとして、家主、仲介業者に慰謝料など約240万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があって、韓国籍であることを入居拒否の理由としており差別に当たるとして認定。慰謝料など22万円の支払いを命じた」(毎日新聞)事例があります。
物品の販売にはよほど特殊なケースを除いて、国籍の理由などが関係することはないのですが、住宅の場合、生活スタイルや慣習に好き嫌いの判断が加わって、いきおい後ろ向きになるのでしょうか。この神戸地裁のケースでは、ペットの飼育を知ったことから契約を断ったそうですが、断られた方は国籍を判断されたととったようです。
賃貸業も大半は個人中心の商売なんですが、お客さんとなる入居者は国も考えも千差万別ですから、ペット飼育を理由に契約を断ったつもりでも、いきおい「国籍問題」に発展します。人を相手に生活権に携わるビジネスだけに、一つ間違えば“差別”に発展するので慎重に期することが望まれます。
ただ、入居者としての外国人を見た場合、
・ 定住(永住許可者、特別永住者)して、外国人登録をし、在留資格がある。
・ 連帯保証人(できれば日本人の)がある。
・ 毎月の家賃の支払い能力がある。
この3点が揃っていれば、もう日本人と何ら変わらないといえそうなんですが、抵抗感はぬぐえず、積極的でない空気があります。国が違えばどうしても生活習慣が違い、習慣の違うミゾの深さを気にし始めると、後ろ向きになる大家さんが多いのも現実です。
大家さんとすれば、管理の大半を管理会社にまかせている場合、入居(率)の状況と家賃の額に最大の関心があるのですから、その入居(率)に影響を及ぼすのではないかとも心配するようです。
やはり外国人ということで挙動が必要以上に目に付く
入居者に外国人を迎える場合、大家さんとして何をすべきか。まず、
・ 身分(身元)確認
・ 外国人登録証の確認
・ 連帯保証人の確認
・ 家賃支払い能力の確認
を行い、そして面談で、一般常識を持ち、共同住宅における生活が可能かを確認して、入居契約を結びます。こうした段取りは、外国人に限らず、一般入居者を対象とする入居審査とほぼ同じだと思います。
外国人の入居者を嫌う理由は、およそ次の4つといわれています(財団法人日本賃貸住宅管理協会)。
1.保証人がいない。
2.入居中のトラブルがある。
3.収入が不安定。
4.日本語の理解不足。
そのために賃貸経営者としては、外国人の入居をなるべく避けて通りたいという気持ちが強く働くようです。
事実、大きな声では言えないとしながら、外国人入居者で難渋した話を聞きます。
・ 契約時の入居者・同居人は一人だったが、すぐに何人かが同居。契約内容と違うと説明したが、ほとんど話(事の主旨)が通じない。
・ ゴミ出しのやり方(ルール)を説明するが、守ってくれない。
・ 部屋で騒ぐので注意すると、母国語で食ってかかる。こちらが警察を呼ぶと言えばいっぺんに静かになる。
・ 部屋の汚し方がヒドイ。退居後の補修・修繕が大変だった。
・ 学生と聞いていたが、学校に行っている様子でもない。
等々、実例は数多くあります。
ことさら悪い話ばかり挙げているわけではないのですが、やはり外国人ということで挙動が必要以上に目に付くようです。働くにしても、学ぶにしても、大半の外国人は日本の法律、賃貸借契約の内容を守って生活しているのですが、何といってもお互いが外国人を相手にするために、生活習慣のスレ違いからくるトラブルは起きないのが不思議なくらいです。
入居のルールを守ってもらい、毎月間違いなく家賃を払ってもらえるなら空室にしておくよりはるかにマシと割り切って貸すか、ハードルを高くして敬遠するのか、賃貸経営者の判断が少なからず左右しているようです。
●●なお、財団法人日本賃貸住宅管理協会が外国人の入居に際しての対応マニュアル、『外国人の入居円滑化ガイドライン』や外国人向け「部屋探しのガイドブック」を作成しています。
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