ハリウッド映画のダイニング・シーン
ハリウッド映画のダイニング・シーン
映画の食事のシーンは、何もハリウッドだけのものではなく、フランス映画
にも日本映画にもイタリア映画にも、世界でつくられる映画どこにでも出てき
ます。しかし、ハリウッドの食事のシーンはチョット違うと思うのです。ハリ
ウッド映画の食事シーンにはハートがあります。
食事シーンに特別な細工をしているという意味ではありません。人間が食す
る場所がレストランであれ家庭であっても、その食事の中身、例えば食材、料
理が盛られている器、テーブルのデザインどれをとっても、その国の文化を色
濃く映しています。ハリウッド映画の食事のシーンには、アメリカ人の食事を
する思い入れが自然に出ているということ。
だから映画を観ていて、他の国がつくった食事シーンとは違うなあという感
じをいつも受けていました。食事の場面ということだけでは語れない、“アメ
リカ生活”そのものが集約されていると思えてなりません。
日本料理の四季折々の食材を使った多彩な内容に比べ、アメリカの食事内容
のワンパターンをいう人は多いのですが、以前、レストランのガイドブック
『ZAGATSURVEY』を出しておられるザガットご夫妻にお話をお聞きした時、ニュ
ーヨークでは国連加盟国とほぼ同じ数の国の料理があって、それが全米に広が
るとともに、それぞれが影響しあってまた違った発展を遂げているのだから、
決して単一のものではないとおっしゃっていました。
平たく言って、ニューヨーカーはじめアメリカの都会人は、旨いものには目
がないというわけです。食い気盛んなアメリカ人がつくる映画だけに、食事シ
ーンを大事にしています。大事にしている分、例によって現実に即して誠実に
つくるのです。さも旨そうに。
ミステリー、サスペンス、ラブストーリー、コメディに関係なく、食事シー
ンを挟み込んでドラマの厚みを増しています。ハリウッド映画のダイニング・
シーンは、アメリカ社会の内面を雄弁に投射していると思います。
(2001.6.12)