「契約一時金」とは (2009年4月21日)
「契約一時金」とは
最近、「契約一時金」をよく目にする。最初は一体何?と思っていたが、話を聞いてみると、礼金とか、原状回復に対する一種の対応策の役割を担っているよう。
一般的に賃貸契約で当初、発生する入居に要する諸費用を総称して、「入居一時金」と呼んでいたものが、時代が変わって賃貸市場の競争激化が影響して、「契約一時金」がつくられたみたい。
不動産の取引きでいう「一時金」の意味合いは、『不動産取引用語辞典』(住宅新報社発行)で、こう説明されている。
「不動産の賃貸借契約に際し、借主から貸主に一時的に支払われる金銭等のこと。一時金は、大別すると、預かり金的性格を有するもの、賃料の前払的性格を有するもの、権利の譲渡的性格を有するものおよび営業権の対価またはのれん代に相当するものの4つがある。一時金には、権利金、保証金・敷金、礼金など新規賃貸借契約に伴うものと、更新料、名義書替え料など賃貸借契約の継続に伴うものがある」
しかし、今日見られる「契約一時金」は、この中のどれにも当てはまらず、契約時に「契約一時金は返還されません」とことわられている。
具体的には、入居者募集の条件として、「家賃8.5万円、敷金10万円、共益費6000円、礼金なし、契約一時金30万円」とあって、「備考欄」に「契約一時金30万円は、契約時に貸主に支払う金銭で返還されません。「入居時必要」と書かれている。
例えば、京阪神でこの「契約一時金」がどのように広まっているかといえば、同じ地域でも「契約一時金」がある物件とない物件が混じっている。今のところ割合としては、ある物件は少ない。
組み合わせも物件ごとに違い、家賃は必ずあるが、敷金(保証金)、礼金、共益費があるものとないものが見られる。
・Aパターン…家賃+共益費+「契約一時金」
・Bパターン…家賃+共益費+敷金(保証金)+礼金+「契約一時金」
大きく分けるとAパターンとBパターンで、中にはBパターンのように敷金(保証金)、礼金を受け取っていながら、さらに「契約一時金」を受け取るケースも見られる。
この「契約一時金」、金額にして家賃の2~5ヵ月分が多く、「返還されない」ことから礼金的性格が色濃い。また、「契約一時金」のある場合、敷金がないとか、あっても1ヵ月未満といったケースが見られる。
最近になって部屋を借りてお金を払う者がなぜ礼金を支払うのかといった“批判”が高まっていることから、その名称に抵抗を感じていた人にはピッタリのネーミングかもしれない。支払う者つまり入居者にとって礼金がなく、敷金あるいは敷き引きがない代わりに、一時的に支払う「契約一時金」は、なんとなく納得したような気にさせるファジーな呼び名とも言えそう。
貸主はこの「一時金」で、部屋の補修・修理の経費を賄う。
ただ、礼金同様に法律的な根拠はなく、経済的な慣行だけに、値引き交渉も可能という。
いずれにしても、仲介手数料のフリーマーケット状態に続いて、「一時金」スタイルが変質している状況となっている。
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(2009.4.21)