『ロミオとジュリエット』と人の痛み・・・
『ロミオとジュリエット』と人の痛み・・・
シェークスピアに関わることを随分書いてきましたが、シェークスピアとい
えば『ロミオとジュリエット』。作品が発表されて400年を経るのですが、こ
の間、悲恋物語として後世の作家、音楽家、演劇人に多大な影響を残していま
す。激しい恋の情熱と詩的な世界。なによりも運命のいたずらに翻弄される人
間の姿と悲しみをいかんなく描いています。
一途なラブストーリーですから、ロマンチックな言葉や表現が随所に散りば
められているのですが、この中にあって、
He jests at scars that never felt a wound.
「人の傷をからかうのは、傷の痛みを感じたことのないやつだ」
が忘れられない一節としてあります。
恋の苦しみを知らぬ者に、他人の恋をとやかく言う資格はない、という意味
で使われているのですが、弱者に対する思いやりの気持ちを持たなければいけ
ないと戒めの意味で、これに近い表現として、人の苦しみを思いやる「我が身
をつねって人の痛さを知れ」といわれたりします。
仕事でも学校でも友人関係であっても、相手の立場に立って、特に弱い立場
の人には十分気を配ってあげましょうという教えを、「He jests at …」から
知るまでもなく、普段の生活で少しでもこんな気持ちで過ごしたいものです。
※ 本文中の日本語訳は「英語名句事典」(大修館書店)より。
(2001.4.24)