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大阪高裁で更新料を「無効」とする判決(2009年8月31日)

◆ 賃貸ビジネスを考える

大阪高裁で更新料を「無効」とする判決

 賃貸マンションの更新料を「無効」とする判決が8月27日、大阪高裁で出て、賃貸業界に衝撃が走っています。
  
 この7月に京都地裁で、更新料を違法とする判決が出ていたのですが、高裁レベルの持つ判決の重み、影響力は一段と強いものがあります。
  
 徴収した更新料の返還を命じられた家主は、最高裁に上告する意向とのことですが、今後、更新料の取り扱いを巡って、賃貸仲介市場では混沌としそうです。
  
 7月の京都地裁、今回の大阪高裁の判決を受けて、直ちに各地における賃貸借契約条項の内容がどうこうなるものではありませんが、こうしている間にも、更新を控えている個々の案件に混乱が生じることも予測されます。

 従来通り更新料及び更新手数料を受け取っていいものか、この先、もし徴収済みの更新料等の返還を多くの借主から求められることにもなれば、収拾がつかなくなる、といった懸念がついて回ります。 

 更新料については、法令上の根拠となる規定がなく、数十年にわたる慣行として徴収されてきただけに、消費者保護の観点から消費者契約法を当てはめて判断されると、貸主の「賃料補充の性格」に対する、「要望」の「正当性」は、どうしても説得力が弱くなってしまいます。
  
望まれる業界団体等の足並みを揃えた見解

 市場ではすでに更新料の扱いについて、やや織り込み済み的な扱いとなっていて、たとえば京都市の物件で「マンション賃料については、敷金、礼金、更新料等の賃貸条件のバリュエーションが増え、新築物件に更新料なしが増えている」「新築物件で敷金・礼金・更新料なしのワンルームタイプが見られる」(「2009年第2四半期 地価LOOKレポート」国土交通省)などの事例が増えています。
  
 とくに東京都が2004年に、「礼金・更新料のない契約の普及を促進」を表明。民間賃貸住宅に関する「東京ルール」の推進を打ち出して以来、景気の低迷もあって都内では更新料なし物件が広がりつつあります。
 
 といっても、更新料、礼金は賃貸経営上、収支のバランスを図る重要な収入であることに変わりなく、これがいきなり徴収不可となると、賃貸経営の台所は厳しさを増すばかり。賃貸経営者の85%が個人経営といわれるだけに、急速に経営環境を悪化させるのが危ぶまれるところです。

 そしてもう一つ気になるのは、借主、貸主ともに大きな影響を及ぼすこうしたお金の扱いが「慣習」として、地域に根づいている点。同じ賃貸住宅に入居しても、必要としない地域と必要とする地域があること。地域独自の慣習のあり方にメスを入れないことには、そうそういつまでも放置できないのではないでしょうか。 

 それと、ビジネスとはいえ、日本の住宅事情を一方で支える家主が「商習慣の是非」を個人で、裁判しなければならない負担は、相当なもの。不動産仲介業の業界団体等がもう少し足並みを揃えた見解を示していいと思うのですが。

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(2009.8.31)

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