時代の大きなうねりの中で、多様なバリエーションを見せる入居一時金(2009年10月23日)
時代の大きなうねりの中で、多様なバリエーションを見せる入居一時金
空室でおいておくよりも少しでも入居者の便宜を図りつつ、契約の促進を狙う
賃貸市場の軟調を受けて、各地の賃料は弱含みで推移していますが、一方で、市場の動向を反映して入居時にかかる諸経費、入居一時金の初期費用に多様なバリエーションが広がっています。
例えば、かつて礼金のなかった地域に礼金制が持ち込まれ、しかも金額が家賃の5ヵ月分とか6ヵ月分。その分、敷金が旧来は6ヵ月ほどであったのが0かあるいは1ヵ月分と減少。また、「契約一時金」といった金額も見られます。
賃貸借契約時の担保である敷金、保証金が少額になる、あるいはゼロになる一方で、それをカバーするために礼金が4ヵ月とか5ヵ月になって、解約引きが100%で敷金、保証金の返還がない。
さらには、敷金1ヵ月に対して礼金3ヵ月。保証金も礼金もゼロ。…という風に、同一地域であっても物件ごとに条件が違うケースが当たり前のようになっています。
10月23日発表された(株)ネクストの9月の「HOME'Sマーケットレポート」では、「首都圏マンションの平均礼金、初めて0.8か月分を割り込む」となっています。
これは多分に賃貸経営者、大家さんの意向が色濃く反映されて、空室でおいておくよりも少しでも入居者の便宜を図りつつ、契約の促進を狙ったものと思われます。
入居者からすれば、同一パターンの入居条件ではなく、費用の項目の組み合わせで、自身の負担割合が選択できるという捉え方もあるのですが、市場全体から見れば統一感のない不自然さを免れない感じです。
礼金、更新料が時代の大きなうねりの中で、変化を余儀なくされているのですが、それに併せて仲介最前線では商談に少しでもプラスになればいいのでは、といった判断から条件の変更を前面に打ち出して契約を図っているものと見られます。
市場はいつも一本調子ではなく、ビジネスチャンスを広げるため、鋭敏な動きをするものです。多様なバリエーションを見せる入居一時金の初期費用も、そうした動きに反応した現れではないでしょうか。
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(2009.10.23)