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長年の住宅行政のゆがみが吹き出した結果とも見られる(2009年10月15日)

◆ 賃貸経営の今を読む (峰 匡太郎)

長年の住宅行政のゆがみが吹き出した結果とも見られる

消費者契約法の施行以来、状況が一変

 賃貸経営に関連する報道が、ここ1~2ヵ月の間、相次いでいます。
 主な内容は下記の事例などです。

・ 更新料条項を「消費者契約法第10条に該当し無効」大阪高裁(8月27日)
・ 更新料訴訟「消費者契約法違反で無効」京都地裁(9月25日)
・ 家賃滞納などの賃借人の信用情報をデータベース化(9月29日)
・ 賃貸住宅の定額補修分担金は違法、京都地裁の判決(9月30日)
・ 高齢者住宅向け融資条件に違反、住宅金融支援機構に会計検査院指摘(9月30日、新聞報道)
・ 消費税が不適切な税還付を受けている恐れ、会計検査院指摘(10月3日、新聞報道)

 裁判の判例は時代の空気に敏感に反応し、また時代の流れに対応するため、企業(不動産会社)はビジネススタイルを改良(DB化)することから一部齟齬(そご)が生じて、こうした事案が発生するのではないでしょうか。

 元来、不動産取引きや賃貸借契約に関して、消費者を守る法律は宅地建物取引業法がメインで、このほか、誇大広告等を防止するため、物件案内の広告に対する規制として、公正取引委員会の認定を受けた「不動産の表示に関する公正競争規約」が、一般消費者及び関連事業者の利益を守ってきました。

 ところが2000年4月1日に消費者契約法が施行されて以来、状況が一変、「消費者の利益を不当に害する一定の条項の全部又は一部が無効」とされる判断基準が、これまでの宅建業法に加えて運用基盤の指標として、広く行き渡ろうとしています。

 とくに賃貸住宅の場合、長年、地域に根付いた商慣習とともに、賃貸仲介不動産会社の全国展開に際し、特異なビジネス手法が他地域に持ち込まれたことから、取引き形態に独特な発展を遂げています。

 それは創意工夫により、収益の上がるビジネスモデルを、時々に応じて形成してきたともいえなくないのですが。

 話が少し変わりますが、国の公式文書の中によくこうした表現が出てきます。

 「民間賃貸住宅は、住宅ストック全体の3割(約1,260万戸)を占めており、国民の豊かな住生活を実現するためにも、また、ライフスタイルやライフステージの変化に応じた多様な居住ニーズに応えるためにも、民間賃貸住宅の質の向上等は重要である」(国交省)

 また、「ファミリー向けの広い賃貸住宅は依然として不足しており、借家に居住する4人以上の世帯の約18%(約46万世帯)が最低居住水準未満となっている」(国交省)とも。

 そしてよく知られていることですが、「民営借家のうち、個人所有のものが全体の約85%を占めている」(総務省)、「個人経営者のうち、6割が60歳以上の高齢者」(日本賃貸住宅管理協会)という現実。

 ファミリーの物件が品薄というのは、もう10年も20年も前からいわれていることですが、国は空き家率が12.2%になった6年前の2003年から公営賃貸住宅の新設をやらない方針を打ち出しています。

 そうすると、「国民の豊かな住生活を実現するため」に、全国の60歳以上の賃貸経営者が老骨にむち打って一肌脱がないといけないということなんでしょうか。

 国民の住生活の一部分を支えるのが、高齢者を中心とした賃貸経営者、つまり町の大家さんというのも、ちょっと不自然な格好となっています。

 前述した、報道されている事例などは、長年の住宅行政のゆがみが吹き出した結果とも見られます。

 国が不動産ビジネスにどこまで関わればいいのか難しいところもありますが、東京ルールに見られる原状回復の「ガイドライン」同様の「指針」が、各部門に求められているのは間違いないところです。

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(2009.10.15)

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