2012年の賃貸業界、入居者の多様なニーズに応え、新たな需要の掘り起こしで市場拡大図る
2012年の賃貸業界、入居者の多様なニーズに応え、新たな需要の掘り起こしで市場拡大図る
2012年の賃貸住宅業界における主だった出来事
時代の動きに合わせ、打てる範囲内の方策に対応する
2012年も残りわずかとなりました。政治、経済も大きく変動する兆しを見せています。賃貸住宅業界におきましても、様々な問題を抱えながら年を越そうとしています。そこで、今年1年、賃貸業界において話題になった出来事、市場の主だった傾向をまとめてみました。
強まる個性化の傾向
賃貸住宅の個性化に拍車がかかったのも2012年の大きな傾向です。従来、個性化といえばデザインマンションに代表されていましたが、今年の特徴として、入居者の多様なニーズに応え、新たな需要の掘り起こしで市場の拡大を図る傾向が強まっていることが挙げられます。
リフォームより一歩踏み込んだリノベーションで再生する、さらにはコンバージョンでイメージの一新を図るといった、大胆な転換が見られました。耐震強化の工事を機に、倉庫ハウス的な雰囲気にリノベーションしたり、築40年を超えた木造物件の内装を入居者にまかせ、あえて原状回復義務を求めないといったケースも見られます。
広まる「太陽光発電」の導入
電力の買取りシステムが整備されて以来、太陽光発電の導入、設置が急増しています。なかでも賃貸住宅は屋根や屋上が広いだけに効率的に発電できることから、「太陽光発電システム搭載の賃貸住宅」が急速に広まっています。
太陽光発電の魅力は「余剰電力買取り制度」を活かして好条件で発電できることで、出力(10kw以上)が大きくなると余剰電力買取りの対象となる上、固定買取り期間も長く(20年)なります。国からの補助金も見込まれるので、条件さえ整えばイメージアップと収益に貢献することになります。
イメージアップといえば、リクルートがこの7月に公表した『2011年度の部屋探しの実態調査(首都圏版)』で、「次に引越す時もほしい設備・仕様は、1位が太陽光発電などの省エネ機器」とあるように、入居者の関心は高いことを示しています。
高まる高齢者ニーズ
国民の4分の1が65歳を超えている高齢社会の日本ですから、当然、高齢者ニーズとの取り組みは、賃貸経営上、無視できないものとなっています。長年、賃貸住宅のメインの層は若者、単身者と捉えていましたが、マーケットの様子が大きく様変わりしつつあります。
ここ1年の傾向は、学生を除く一般単身、一般ファミリー、高齢者、法人が増え、学生の減少が続き、とくに65歳以上の高齢者が、一般単身に次いで伸びているのが特徴です。
賃貸住宅に生活支援サービス機能を組み合わせた高齢者向け賃貸住宅も商品化され、国においても高齢者安否確認、生活相談といったバックアップ体制を強化する一方、補助金、税制優遇、制度融資の充実を図って、高齢者向け賃貸住宅の強化に乗り出しています。
「優良入居者」の取り組み
これからの賃貸経営の安定化のためには、「優良入居者」の長期居住は絶対条件となってきます。転勤や家庭事情による引越しはしかたありませんが、少なくとも住宅に不満を持って出て行くということは避けなければなりません。
今年はこの傾向がいっそう強まったと考えられます。かつては礼金や敷引きの収入を期待して、入居の「回転率」を高めるという考えもありましたが、今日では、できるだけ長く入居してもらうことが安定経営につながるわけです。
壁紙張り替えサービスが増加
また、入居に際して、壁紙の張り替えを自由に選んだり、無料とするサービスが増えてきました。さらにリフォームや自由なカスタマイズもOKというケースも少しずつですが増えています。
中にはこうしたリフォームやカスタマイズに、あえて原状回復を義務づけない事例すら見られます。“オーダーメイド賃貸”化とも呼べる傾向です。前記のリクルート調べのデータでも「入居後のリフォーム・カスタマイズ実施経験は5.4%、実施意向は46.0%と増加傾向」を見せています。
多様化する入居者ニーズをタイムリーに捉える
こうした傾向のほかにも、大きな関心事であります市況の実体、賃料の動向、空室対策などの課題事項も時代の動きに合わせた展開を見せています。
とにかく、多様化する入居者ニーズをタイムリーに捉える。これからの賃貸経営安定のキーワードではないでしょうか。素早く市場の動きを見極め、打てる範囲内の方策に対応していくことが求められます。
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