土地活用の考え方
よくわかる賃貸経営
土地活用の考え方
遊休地を有効に利用する発想
土地の価格は下がっているといっても、土地は昔も今も大変な財産です。
ただ、土地は他の財産と違って所有しているだけで税金がかかってくるということ。相続が発生すれば路線価に準じて相続税が決まってきます。
更地の状態で放置していますと、都市部でも農村においても維持管理は大変な手間です。
そこでいきおい遊休地を有効に利用する発想が生まれるのです。土地を活用するということです。土地を利用して利益を生む一番簡単な方法は、借地として貸すことです。月の賃料はいくら、年決めで○年契約、解約はコレコで、という風に。
借地から一歩踏み込んで、資金を投じて事業化を図る段になると、何(業種)を、どのような方法(事業システム)で、どのくらいの規模(予算)で実行するのがベストか、を決めなければなりません。
土地を所有していても何もしないという選択肢も当然あって、そのままおいておき、まとまった土地なら年間の固定資産税の負担も数十万円に及ぶ地主も少なくないと思われます。
税の支払いの負担となる土地をうまく活用することで、逆に利益を生むとすれば、何か、できる範囲内で着手するのが土地活用です。
土地を所有しているから、土地活用する時代ではない
土地活用といえば駐車場、賃貸住宅経営、ロードサイド店舗などをすぐに思いつくのですが、活用するためには資金を使い土地を造成して新規に建造物を建てる必要があります。
つまり土地に手を加えるのですから、その程度に従って資金がかかり、資金を手当てするためにローンを組むことが出てきます。借り入れが生じてリスクの発生です。
今日、不動産投資も投下した資金が全部フル回転して、高利益を生む機会はめっきり減少し、常にリスクと背中合わせの状況が続いています。
数年前に「あなたの土地有効活用はやめたほうがいい!!」(実業之日本社/船井財産コンサルタンツ)を書店の棚で見つけた時はビックリしたものです。本にも書かれていますが、いままでの常識が通じない時代に、二極化が進み、危険が一杯の土地の有効活用…といいます。
時代が変わり、不動産金融ビジネスは多様化して金融情勢に大きく左右されるだけに、事(土地活用)はそう簡単ではないというのが実情です。
ほんの数年前には定番のベースと見られていた「不動産投資のマニュアル」が通じなくなっています。少子高齢化による社会の急速な変化と、地域における市場性を軽視した収益物件の投資の影響がジンワリと広がりつつあります。
土地を所有しているから土地活用する時代ではなくなりつつあって、この場所で、この広さの土地だから、このビジネスがふさわしい、といったマーケティングに裏打ちされた事業でないと、成り立たなくなっていることを忘れないでください。
土地活用の失敗例
自宅横の空き地に駐車場をつくって、月極契約の募集看板を揚げているのですが、半年経っても1台の車も停まっていないケースがあります。そんな馬鹿なと思われるかも知れませんが、現実にあることです。
地のままの更地を駐車場にしている程度なら仕方ないとアキラメもするのですが、四方をコンクリートの擁壁の造成をして、アスファルトで固める工事をしたとなると、元手をかけているだけに、いつまでも悠長にしておられない。
半年経っても駐車台数ゼロというのには、
・ 郊外で駐車禁止区域ではない
・ 周辺1キロ圏内は戸建ての持ち家が中心
・ 周囲に電車の駅がない
・ 少し離れたモータープールも3分の1が空いている
といった背景があります。
たいして手間もいらずに土地活用ができると見込んで、少なからずの投資をした駐車場経営ですら、間違うとこんな結果となります。
これから周辺の宅地開発が進んで住宅が増えるか、近在の家庭が所有する車の台数が増えたり、思い切り賃料を下げない限り、需要が見込めません。つまり、この駐車場の投資は失敗だということです。
ガソリンの安売り競争についていけないとスタンドを閉めて、2階建てのアパート12戸を建てたものの、完成して1年経つが半分近くがいまだに空室という例もあります。
ガソリンスタンドはだいたいが幹線道路に面し、交通の要所の交差点等に設置されているものですが、そういう場所は便利な半面、車の往来が多く、騒音、排気ガスは避けがたく、生活環境としては負担が大きい。
となると、他に賃貸住宅があるのならあえてそこに住む必要がない。そんな場所に建つアパートが入居募集に苦戦するのは、初めから予測されていたのではないか。
周辺環境を十分に考慮しない駐車場と、住居としてふさわしくない立地であるガソリンスタンド跡に建ったアパート、極端な事例のようですが、こうしたケースは各地でよく見られます。
土地があるから安易に土地活用をした典型的な例だと思います。
土地活用のポイントとなる「土地診断」「マーケットリサーチ」がスコーンと抜けている失敗例です。
「地域の市場性」と「企画」そして「差別化」
地域とは商圏なんですが、ビジネスを始めるのに対象の地域の市場性が「弱い」と先々苦戦することが予測され、「ない」場合は全く話にならない。
十分な市場性が見込めるようなら、いかにすれば当たる(繁盛する)かに最大限の工夫(企画)を施します。
これを賃貸経営に当てはめると、アパート、マンション経営を始めるに当たり、地域において、
・ 今後10~20年にわたって需要が見込めるか(市場性)
・ 時代の流れとなっている、高齢者対応として何ができるか(企画)
これを確実に押さえておくことがポイント。
地域と時代の賃貸ニーズを読んだプランの検討、アイデアの実施を抜きにこれからの厳しい賃貸経営は考えられない。今日はそんな時代です。
パックにされた安く、速くできる“アパート”を建てるだけでは限界に近づいているのです。どこまで差別化を図れるか、そして競争力をつけることできるかが、賃貸ビジネス成功のキーワードとなっています。
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